なぜ人は千羽鶴を作るのか
病に倒れた人へ回復を願って贈る「千羽鶴」
災害にあった地域の復興を願って贈る「千羽鶴」
日本には古くからある千羽鶴を贈る風習があります。その風習は少なくはなってきましたが現在でも残っています。
これを読んでくれている方の中にも千羽鶴を作った経験がある方もいらっしゃるかもしれません。
ところでなぜ千羽鶴なのでしょうか。
そう考えた方もいらっしゃるかもしれません。
今回は千羽鶴を作る理由と紙についてお話ししようと思います。
紙の歴史と人とのつながり
紙は現在では書類に襖や壁紙など日常的に使われています。
主に記録媒体として使われることが多いですが紙が発明される前は粘土板や木の板、羊皮紙などが使われていました。それが植物の繊維をほぐし成形する現在の「紙」へと変わっていったのです。
パピルスというものを聞いたことがあるでしょうか。パピルスとは古代エジプトで作られた紙のことです。紙の製法がどこからどういう風に伝わっていったかは分かりませんが世界各地でその地域それぞれの呼び名と製法があります。
普段何気なく使っている紙ですがしっかりとした歴史があるのです。
紙に宿る神様と神様の宿る紙
御幣(ごへい)というものを聞いたことがありますか?なかなか耳にする機会がないかもしれませんが神社などの本殿に置かれているものです。
玉串と呼ばれる棒状のものにジグザグに作られた紙を見たことがないでしょうか。注連縄に付けられたジグザグの紙は紙垂(しで)と呼ばれるもので別物です。紙垂は稲妻を表しているのですがその理由はまた別の機会にお話ししようと思います。
本殿に置かれている御幣は白い紙で作られたものもありますが中には金色の紙を使われているものもあります。
それが御幣です。神様へのお供え物とされていますが神様の寄り代ともされています。
古来より紙には神様や魂が宿ると考えられています。
神社にある御幣もその一つですが陰陽道の世界ではヒトガタに形作られた幣と呼ばれる紙を使います。陰陽師はその幣に式神などを宿らせて術を使います。
このように紙は貴重な存在でありながら魂などが宿りやすいものだと言われています。
それではそろそろ話を「千羽鶴」に戻しましょう。
なぜ千羽鶴を作るのか改めて考えてみる
人の回復を願って贈ったり地域の復興を願い贈る千羽鶴ですがなぜ千羽鶴なのでしょうか。
鶴は長寿の象徴でたいへんおめでたいとされています。それが千羽いることは非常にめでたいことだという理由で千羽鶴だとされていると聞いたことがあります。
ですが理由は本当にそれだけなのでしょうか。
古来より魂が宿りやすいとされてきた紙ですがその紙を使うことによって「魂」ではなく「想い」を宿らせることも出来るのではないでしょうか。
千羽鶴とはただめでたいだけではなく一羽一羽に人の想いの込められたものなのだと思いたいです。
千羽鶴である理由は他にもいろいろと考えましたがこれが最後にたどり着いた答えです。
電話やネットの普及により手紙を書くという機会が減ってしまいました。だからこそ時には手紙を出してみてはどうでしょうか。紙と文字にあなたの想いを込めて。
それでは今夜はこのあたりで。