「かまいたち」痛みもなく皮膚を切り裂く妖怪
夏は暑いものです。日中の暑さを忘れるかのように夕涼みがてらに散歩に出かける方もいらっしゃるでしょう。
いえ、夏場でなくとも散歩には行かれたことのあるかたは多いでしょう。
そんな時に衣服はなんともないのに皮膚だけがパックリと切れていてしかも切り口は綺麗で血が出ることもなくさらに痛みもなくいつ切れたのかも分からない。
そんな経験がある方はいないでしょうか?
それはきっと妖怪の仕業です。しかもそんなことが出来るのはあの妖怪しかいません。
その妖怪の名前は「鎌鼬(かまいたち)」と言います。容姿はイタチのようですがまるで鎌のように鋭い爪を持っています。
イタチは山あいの地方ではよく見かけることが出来ますが都会ではなかなか見ることはできません。そうですねフェレットを想像して頂ければ良いと思います。
フェレットを少し丸くした感じの動物ですね。
イタチもフェレットもはっきり言って可愛いです。そんな姿からは想像も出来ない所業。
今回はつむじ風と共に襲ってくる妖怪「かまいたち」についてお話ししましょう。
かまいたちの正体と落とした手帳
人を襲う妖怪であり風の怪異である鎌鼬の伝承は日本各地に残っていてその内容も地域により少し違いがあります。
特に雪の多い地方に伝承が多く残りますがかまいたちが起こす現象についてほぼ同じ内容のものが残っています。
新潟県に鎌切坂という坂があります。この坂で転ぶとまるで何かで切ったような傷が出来るといいます。
これはカマキリの怪異の仕業であると考えられています。
高知県を始めとする四国ではかまいたちに切られたような事が起こると「野鎌」という鎌の怪異によるものだと考えられています。野鎌とはお葬式などの際に使われ放置された鎌が化けた妖怪のようなもののことです。
ところ変わって愛知県ではどうなのでしょうか。
以前オサキや管狐の話をしたことがあるのですがたしかその記事の中で飯綱(いづな)という言葉を使った覚えがあります。
飯綱というのは管狐の別名です。長野を中心とする中部地方で使役されている管狐ですが東海地方でもその伝承は残っています。
愛知県でも同様でかまいたちの正体はかつて飯綱使いに使役されていた飯綱が主人を失い野生化したものだと考えられています。
他にもかまいたちに切られることと道で転ぶことがセットになっていることが多いのですがそこには3人の悪い神様がいるためという話も聞いたことがあります。
一人目の神様は人間を転ばせる。二人目の神様は人間を切りつける。三人目の神様はすぐさま薬を塗る。
この三人の連携プレイによって痛みも出血もない鮮やかな切り傷が出来るのだと言うのです。
このようにかまいたちの正体に関しては様々な話が残っています。
実際子供の頃には風の中に真空になる場所があってそこに触れることで皮膚が切れてしまうのだと思っていましたが実際人間皮膚は結構丈夫らしく真空の部分に触れたくらいでは切れることはないそうです。
あとは寒い地方に多く伝承が残っていることから寒さによる皮膚表面の気化熱が起こす赤ぎれだという説も有力だとされています。
しかし実際になったことがある人は分かると思いますが鎌鼬の切り口は赤ぎれよりもずっと綺麗です。それに赤ぎれは痛みもありますし何より鎌鼬に切られた傷は治りが早くしかも傷痕すら残りません。さらに寒い時期ばかり起こるものではありません。
科学的に見れば赤ぎれが一番有力かもしれませんがどうも納得出来ない点が多いのも確かです。
かまいたちが人間に重傷を負わせたという話は聞いたことがありません。イタチであろうが管狐であろうが動物には変わりないのです。彼らはきっと人間にじゃれているだけなのでしょう。猫がじゃれてきてちょっと引っ掛かれるくらいに思っておくのもいいかもしれません。
そういえば昨日夜遅くまで出掛けていたのですが帰りに神社の前を通りかかった際に鳥居の真ん中に猫が居ました。
しばらく挨拶がてらに視線を外したりしていたのですがこちらを見据えたまま微動だにしないその姿に威圧され何もせずに立ち去りました。
そうそう、言い忘れました。古来よりかまいたちは暦を踏むとやって来ると言われています。かまいたちにやられた傷は古い暦を焼いて傷にあてると良いそうです。
暦とは現在でいうところのカレンダーですね。カレンダーを踏むことはまずないでしょうが手帳なら話は別です。さらに言うならスケジュールなどが詰まったスマホもそうでしょう。
手帳やスマホはふいに落としてしまうことがあるかもしれませんが決して踏まないようにしてください。
もしかまいたちの姿が見たいのなら話は別です。スマホを踏んでみるともしかすると可愛らしい鎌鼬に出会えるかもしれませんよ。
でも思いっきり踏まないでくださいね。ただスマホが壊れただけだったという結果のほうが多いのは確かなのですから。
それでは今日はこのあたりで。