「十五夜」と「十三夜」は聞くけれどあまり聞き慣れない「十日夜」
「また来週あそこに行ってみよう」
「また来月あの場所で会おう」
「また来年ここで一緒に過ごそう」
あなたはこんな風に約束を交わしたことはありますか?
ずっと先の約束を忘れてしまったことはありませんか?
話は変わりますが日本にはいろいろな風習があります。風習の中には古くから自然を愛でてきた日本人ならではの風習も多くあるのです。
今回お話する「月見」も自然を愛でるそんな風習の一つです。
これまで何度かお月見についてお話ししてきました。
月が雲に隠れている中での月見「無月」、雨と共に月を愛でる「雨月」など月見一つをとっても様々です。
そして今回はお話するのは「片月見(かたつきみ)」と呼ばれるものです。「片見月(かたみつき)」とも呼ばれます。
月見として有名なのは旧暦の八月十五日から十六日の夜にかけて月を愛でる「十五夜」でしょうか。「中秋の名月」と聞けばよく耳にするのではないでしょうか。
ですが実はその約一ヶ月後には「後(のち)の月」と呼ばれる旧暦九月十三日から十四日の夜に行う「十三夜」と呼ばれる月見があります。
古くはこの「十五夜」と「十三夜」の月はセットで見るものとされていてこの内片方の月しか見ないことを「片月見」や「片見月」と呼んだのです。
そしてさらにこの「十三夜」のおよそ一月後に「三の月」と呼ばれる月見があります。
旧暦十月十日の夜に行われるその年の収穫の最後を飾るお月見が「十日夜」です。
「十日夜」はあまり聞くことがないかもしれませんがこれら三夜が一連のお月見の流れだったのです。
ただ特に重要とされたのは「十五夜」と「十三夜」の両方を見るということです。
それもある条件の元でです。
「片月見」それは験担ぎなのかそれとも約束なのか
古くは十五夜と十三夜の月を両方愛でることはとても重要だとされてきました。
実は片方の月しか見れないことを「片月見」や「片見月」と呼び縁起の悪いことだとされています。
しかもこの片月見にならないためにはある条件があります。
ただ二夜の月を愛でるだけではいけないのです。
二夜とも「同じ場所」で月を愛でなければいけないのです。
そう、場所が違えば例え月見をしたとしてもそれは「片月見」で縁起が悪いのです。
験を担ぐ人ならこれは深刻な事です。十五夜を過ごした場所に十三夜にも必ず居なければいけないのですから。
さて、ここまで来ると気づいた方もいらっしゃるかもしれません。
この片月見を逆手に取るべき人達が居ますね。
それはお茶屋さんなどのお店をやっている方々です。
ピンポイントで言うなら団子屋さんやお茶屋さんです。
月見と言えば団子というのは説明する必要もないかもしれませんがお茶屋さんなど今で言うところのデートに活用されるようなお店は十五夜に客に足を運んでもらえるように躍起になっていたそうです。
なぜなら十五夜に店を訪れて月見をしたのなら十三夜にも同じ店に足を運び月見をしなければ「片月見」になってしまうのですから。
しかしそんな感じに縛られるようにお月見をしていたわけではないと思います。もっと気楽に馴染みの店を訪れたり家の軒先からのんびり月を愛でていたのでしょう。
ただなぜそのような風習が出来たのでしょう。
それはもしかすると…
「ねぇ、来月もここで(わたしと)お月見しないと災いが降りかかるらしいよ」
みたいな感じで愛する人に来月も会いたいと願うちょっぴりツンデレの女性が発した一言が発端だったりするのかもしれませんね。
あなたは忘れたりしていませんか?
ずっと昔に交わした約束を。
それでは今夜はこのあたりで。