「バンシー」死を呼ぶ泣き声が運ぶのは讃えなのか悲しみなのか

その泣き声は死の予告「バンシー」という名の妖精

夜の帳が降りると次第に世界から音が消えていきます。静寂の包む夜は明るい昼間には聞こえなかった、正確には聞こえてはいても気にならなかった音も耳に入ってきます。
風の音に遠くで話す人の声。時には自分の体から発せられる音までです。

しかし今回紹介するのはそんな前提はお構い無しで寝ている人間も飛び起きるほどの大きな音を発する者です。
彼女の名はバンシーと言いアイランドに伝わる女性の姿をしている妖精です。

彼女が発する音とは爆発音や破裂音の類いではなく泣き声です。
ただシクシクと泣くような泣き声ではなく泣き喚くような泣き声なのです。言い表すのであれば人や獣の叫び声を合わせたような音でその泣き声は恐怖を植え付けると言われているのです。

バンシーは黒髪に灰色のマントを羽織っているそうです。そしてその目は炎のように赤いのだそうです。
一見すれば恐ろしい容姿なのですが実は目が赤いのには理由があるのです。

伝承ではバンシーの泣き声は死を呼ぶと言われています。バンシーの泣き声が聞こえた家では近くに死者が出ると言われているのです。

しかしバンシーが死を呼んでいる訳ではありません。近くに死者の出る家にバンシーが訪れて死を悲しみ泣いているのです。
そのためバンシーの目は赤く充血してしまっているのです。

そしてなんとバンシーは複数存在します。通常バンシーは一人で現れますが死を迎える者が聖人であったり英雄だったりするときはその家には複数のバンシーが訪れるのだそうです。

ただバンシーは全ての家に訪れる訳ではありません。ケルトの家系の者の元にしか現れないと言われています。ちなみにケルトの旧家にはその家にバンシーが住んでおり遠く離れた家族の死をも知らせてくれるのだということです。

容姿からは恐いイメージを抱いてしまいがちですが実は心優しい妖精なのですね。

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ケルトの三つ巴「バンシー」「デュラハン」「グレイマン」

少し誤解はありますが死を呼ぶ妖精バンシーはアイランドの伝承です。
アイランドに残る死を予告する怪異として語り継がれているのはバンシーだけではありません。

以前お話しした「首なし騎士デュラハン」も同様に死を呼ぶ者とされています。

先程誤解があると言いましたがバンシーは実際には死を呼ぶのではなく死が近くなったことを知らせてきているのです。
それはデュラハンにも言えることです。デュラハンもまた死が近付くと現れます。ただデュラハンは恥ずかしがり屋なのか姿を見ようとする人間には容赦ありませんが。

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ちなみに前に少し触れたスコットランドのグレイマンも声により死を予告する者です。

しかしなぜケルトには死を予告する存在が複数いるのでしょうか。
もしバンシーとデュラハン、グレイマンが同時に現れたらトリプルパンチです。

バンシーは声により死を宣告します。デュラハンは姿を見られるのは嫌いますが現れることにより死を宣告します。そしてグレイマンは声と姿を現すことにより死を伝えるのです。

ひとまずグレイマンは置いておきますが実はデュラハンは女性の姿をしているという伝承ものこっているのです。そしてバンシーは乙女であったり老婆であったりとその姿は様々です。

もしかするとバンシーとデュラハンは同じ者なのかもしれません。その人が死をどのように感じているかによって見え方が違うのかもしれませんね。
そういえばいい忘れていましたがバンシーは泣いていないときは姿が見えますが泣いているときは姿が見えなくなると言われています。

人には誰にでも耳障りな音があるでしょう。怒鳴り声やチクチクと刺さる小言もそうでしょう。
しかしそんな音に惑わされて姿が見えなくなっていませんか。

小言や怒鳴り声に秘められたその言葉の本質が。

それでは今夜はこのあたりで。

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