「辻神」この世とあの世の境目である十字路に潜む魔物

現世と来世の境界と言われる交差点

よく平城京つまり現在の京都市は路地が碁盤の目のようだと言われます。
碁盤の目のようだと言うことはもちろん「T字路」もあるでしょう。そう言えば以前はアルファベットの「T(ティー)」ではなく漢字の「丁(てい)」で「丁字路」と表されていたのだと聞きました。
なぜ三叉路をアルファベットのT(ティー)で表すのに交差する四叉路は漢字の十(じゅう)で表すのだろうと感じることがあったのですがこの話を聞いてすっきりしました。

今回お話しするのは「丁字路」ではなく「十字路」についてです。
前にクロスロードデビル「十字路の悪魔」についてお話ししましたがそれとはちょっと違うお話です。

道と道が交差する場所を十字路と呼びますが「四ツ辻」や単に「辻」と呼ぶことがあります。
そしてこの辻は古くから現世と来世の境界になっているという説があります。

来世は仏教の世界では今世が終わって次に魂が経験する人生の事を言います。
ただ神道では来世は常世を意味します。常世とは人が住む現世とは別の世界のことを言います。常世には神域や黄泉の国も含まれています。

十字路の悪魔の話の事を考えると天界や悪魔の住む世界との境界でもあるのでしょう。

そのような人にあらざるものが住む世界への入り口が十字路にあるというのです。

そして今回はその「辻」に潜む魔物についてお話ししましょう。

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辻に棲むと言われる魔物「辻神」

九州地方や中国地方には辻に現れる魔物の伝承が残っています。
その魔物は「辻神」と呼ばれます。

神と名が付いていますが人々が崇めるような信仰対象の神ではなく災厄をもたらす負の存在「悪神」としての名前です。

辻神が現れるとその周囲に不幸や疫病をばら蒔くと言われています。
そのために辻神の伝承がある地域では石敢當(いしがんどう、いしがんとう)と呼ばれる文字の刻まれた魔除けの石碑が置かれて辻神の侵入を防いでいます。

しかし実は十字路だけでは丁字路の場合でも注意が必要です。
一本の道が他の道に交わった突き当たりの土地には辻神が居座るとされているのです。
このため丁字路の突き当たりに建っている家には石敢當が設置されたそうです。

この石敢當は沖縄県でも目にすることが出来ます。それは沖縄県の魔物「マジムン」から身を守るために設置されているのだそうです。

さて、古くから集落とそこに住む人達を守るために道祖神(どうそじん、どうそしん)というものが各地に置かれています。

それは町の中心だったり集落の入り口だったり集落と集落の境界にある辻だったりと置かれている場所は様々です。
道祖神は人々が間違って神域や黄泉の国など常世へと迷い込まないように境界の目印として置かれていることもあるのです。
しかし主な目的は集落に災厄が入ってくるのを防ぐことだとされています。

これは辻神の侵入を防ぐ石敢當と少し似ていますね。
道祖神が祓う災厄とはなんなのか。辻神とは一体どういう存在なのかを考え始めると長くなってしまいそうなのでそれはまた別の機会にすることにしましょう。

丁字路にしろ十字路にしろ災厄はいつやってくるか分からないものです。
人も車輌も交差点では必ず安全を確かめましょう。


それでは今日はこのあたりで。

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