桃の節句と雛祭りの本当の目的
日本には年間を通していくつかの節句があります。季節の節目を表す節句は陰陽五行説に基づき定められていて節日とも呼ばれます。
そして節句には様々な行事が行われます。今回お話しするのは数ある節句の一つ「上巳(じょうし)の節句」です。
上巳の節句と聞いてもなかなか聞き慣れない言葉ですね。この節句は毎年3月3日にあたりちょうど桃の咲く時期になるので「桃の節句」とも呼ばれます。
桃などの植物から生命力をもらい厄を祓おうというものなのですがいつしかこの日にある行事が行われるようになりました。
それが「雛祭り」です。そしてこの雛祭りには実は厄除けや厄祓いの意味が込められているのです。
今回は雛祭りの起源と由来、そして雛人形に込められた本当の意味についてお話していきましょう。
人形遊び「雛遊び」と厄を祓う儀式「流し雛」
いつの時代も女の子が人形で遊ぶ光景を目にするものです。それは平安時代でも同じことだったようです。
当時の女の子達は「屋形」と呼ばれる御殿つまり人形の家を作り人形遊びをしていたそうです。
「雛祭り」が時折「雛遊び」と呼ばれることがあるのはこの頃からの名残なのですね。
そして同じく平安時代に同じように人形を使った行事が行われていました。儀式と言ったほうが適切かもしれません。
それこそが上巳の節句に行われる「流し雛」です。紙で作った人形に厄や穢れを移し川に流すことで厄や穢れを祓おうという儀式です。
そして時は流れて江戸時代にはこの雛遊びと流し雛が一緒になり3月3日の節句に雛祭りが執り行われるようになったのです。
雛遊びの人形(にんぎょう)と流し雛の人形(ひとがた)
日本には様々な言葉があります。同じ読み方でも違う意味の言葉もあれば読み方が違っても同じ意味を持つ言葉もあります。
そして同じ漢字を使っていても実は読み方も意味も全く違う言葉もあります。
今回お話した中にもそんな言葉があります。
それは「人形」です。
先程「雛遊び」と「流し雛」についてお話ししました。そのどちらにも人形という漢字が出てきますが実は読み方が違います。
雛遊びに使うものは「にんぎょう」です。しかし流し雛に使われるものは「ひとがた」です。
「にんぎょう」は耳慣れたものでしょうが「ひとがた」とは一体なんなのでしょう。
「ひとがた」とは人の形に作られた「形代」のことです。形代とは神霊の依り代だったり念を込めるために使われるもので「にんぎょう」とは異なるものです。
よく人形供養という言葉を耳にするかもしれませんが人形には魂が入りやすいという話を聞いたことがないでしょうか。
それはもしかすると「にんぎょう」と「ひとがた」がいつしか混同されてしまったせいなのかもしれません。
3月3日は雛祭りです。
あなたが飾るのは「にんぎょう」なのでしょうか。
それとも「ひとがた」なのでしょうか。
それでは今夜はこのあたりで。