異種なるものの合成「キメラ」と「鵺」
生物学には「キメラ」という言葉があります。
「異種なるものの合成」という意味ですがこれの元になったのがギリシャ神話に登場する「キマイラ」という怪物です。
頭はライオンで胴体は山羊そして蛇の尻尾を持っています。さすがはテュポーンとエキドナの娘で両親の蛇の特徴をしっかりと受け継いでいます。さらっと言いましたが「キメラ(キマイラ)」は娘です。
口からは火炎を吐いて時々山を燃やすこともありました。
続いて舞台を日本に移しましょう。日本にも「異種なるものの合成」である姿を持つ怪物がいます。
猿の顔と虎の手足を持っていて狸の胴体に尻尾は蛇という姿の怪物です。キメラと同じ蛇の尻尾を持っているのが今回同じ記事で紹介しようとした理由です。ですがこの体の構成は説により様々です。
夜に鳴く事からこの名がつきましたが得体の知れない人の事をこう呼ぶ時代もあったようです。
その名は「鵺」と書いて「ぬえ」または「や」と読みます。
「平家物語」にも登場するこの怪物は平安時代後期に世に現れたと言われていますが縁起の悪いものとされその鳴き声は不吉の前兆と恐れられていました。
怪物には英雄が必要
世にある物語のほとんどのものには悪に対する善の存在が描かれています。
悪があるからこそ善が存在して善があるからこそ悪が存在するのでしょう。
紹介した「キメラ」と「鵺」にも対する善の存在がいます。キメラには英雄ベレロフォンが鵺には源頼政です。
キメラとベレロフォン
キメラはペガサスに跨がるベレロフォンと対峙します。ベレロフォンは先端に鉛を付けた槍をキメラの口に突き刺します。
槍の先端に付いた鉛はキメラの炎によって溶けてしまいキメラの喉を塞いでしまいます。その結果キメラは窒息死してしまいました。
この話とは関係ないかもしれませんがキメラはテュポーンとエキドナの子供です。つまり以前紹介したケルベロスやオルトロスと兄弟関係にあります。
鵺と源頼政
時は平安時代。二条天皇は毎晩続く鵺の鳴き声に恐怖していました。そしてついに病に倒れます。
そこで鵺退治を任されたのが弓の達人である源頼政です。頼政はある晩に御所を取り巻く黒煙に気付き矢を射りました。
すると悲鳴と共に鵺が二条城の北方に落ちてきたのです。同行したものが鵺の元に走り討ち取ったと言われています。
鵺が落ちた場所ですが諸説あります。静岡県浜松市には三ヶ日町鵺代、胴崎、羽平、尾奈という地名があり四つに分かれた鵺が落下したのが地名の由来だとも言われています。
また討ち取られ四つに分かれた鵺が飛び散りそこから犬神が生まれたとも言われています。
善と悪との戦いはずっとおわらないのかもしれません
ある映画でこんな台詞がありました。
「人間がみんな天使なら世界も平和なのに」
果たしてどうなんでしょうか?平和な世界は理想的です。ですが悪があるからこそ善を実感できるのだとしたら平和でない状況があるからこそ平和を感じられるのかもしれません。
ですが悪は悪です。いつどこで自分の身に降りかかるか分かりません。そしてその時英雄が現れてくれるかは分かりません。常日頃から自分で出来る限りの用心はしておきましょう。
それでは今夜はこのあたりで。