「りゅうず」とは腕時計の横に付いているダイヤルのこと
物事の変化を認識するための時間。当初は太陽や月の位置などから人は時間を認識していました。
そして日時計や砂時計などが考案されて時間というものが具体化されていきました。
8世紀になると歯車を使った時計が増えていきゼンマイ式や振り子式の時計も発明されました。
水晶を用いたクォーツ時計が発明されたのは20世紀に入ってからのことです。
そしてクォーツ時計は仕組みが簡単でありながら正確に時間を刻むために腕時計に使われることが多くなってきます。
現在ではファッションや実用性から腕時計を着ける機会が多いですね。そしてそんな腕時計の中でも高級時計と呼ばれる高価な腕時計は誰でも一度は憧れるものでしょう。
高級腕時計というのはどこかステータスとされている部分がありますが身の丈に合わないものを身に付けていてもいつかはボロが出てしまいます。
腕時計はやはり自然と目に留まるものです。高級なものを身に付けているのにいざ蓋を開けてみると身の振り方などはそうでもなかったという経験がある方もいらっしゃるかもしれません。
それではただの竜頭蛇尾(りゅうとうだび)になってしまいます。
竜頭(りゅうとう)と言えば時計に同じ漢字を使う部品があるのをご存知ですか。
それは竜頭(りゅうず)と呼ばれるものです。
腕時計でいうとちょうど3時の位置に付いている日付や時刻を合わせるダイヤルのことです。
リューズと書かれていることも多いので英語なのかもと思われるかも知れませんが実は日本の言葉なんです。
さて、それではなぜこのダイヤルが竜の頭と書くのかをお話ししていくことにしましょう。
竜頭(りゅうず)の由来となった中国神話の怪物「蒲牢」
腕時計に付いているダイヤル「竜頭」の名前の由来についてお話ししていくわけですがそれは時計が現在の時計の形となる前まで時代は遡ります。
それでは現代から当時へと時間を遡りながら竜頭の由来についてお話ししていきましょう。
現在では日本全国に普及している腕時計ですが全国に普及しはじめたのは1900年代初めの頃です。
それまでは腕に着けるのではなくポケットに入れて持ち歩く懐中時計が一般的でした。
そして懐中時計を見たことがある方なら分かるかと思いますがこの時計には落下防止の役目をするチェーンを付ける部分があります。
この時からこの部分を「竜頭(りゅうず)」と呼んでいたのだそうです。懐中時計の頃にはすでに竜頭が存在していたのですね。
それでは次は一気に時間を遡り人々に時計が普及するよりももっと前の時代の話です。
西暦671年のお話です。6月10日に当時の天皇である天智天皇は水時計にて時間を測りそれを鐘や太鼓を使って民衆に知らせたそうです。
この出来事が6月10日つまり「時の記念日」の由来でもあるのです。
とりあえず「時の記念日」の話は一旦置いておきましょう。大事なのは民衆にとってはこの日から鐘や太鼓の音は時計と同じ役割を持っていたということです。
鐘と聞くと皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。お寺にある釣り鐘「梵鐘」が頭に浮かんだ方が多いのではないかと思います。
このような釣り鐘には鐘を吊るすために上に紐や鎖を通す部分があります。この部分を鈕(ちゅう)と呼びますが実はこの鈕には様々な彫刻が彫られている事が多いのです。
この彫刻で良く彫られているのが中国神話に登場する「蒲牢(ほろう)」と呼ばれる怪物です。
この蒲牢は「竜生九子」つまり竜が生んだ九つの子の一つとされている怪物です。
吼えるのが好きな怪物なので音がよく響くようにと鐘に彫刻が彫られたのかもしれません。梵鐘の鈕が蒲牢と呼ばれるのはこれが由縁です。
そして蒲牢は姿形が竜によく似ているのです。
その事から鈕もとい蒲牢はいつしか竜の頭つまり「りゅうず」と呼ばれるようになったのです。
時を知らせる鐘を吊り下げる竜頭は時代の流れと共に懐中時計が普及していく中でもチェーンを通す鈕は竜頭と呼ばれていくのです。
そして現代の腕時計でも鈕の名残でダイヤルを竜頭と呼ぶようになったのだそうです。
長々とお話をしてきましたが「竜頭は中国神話の蒲牢が由来だった」ということですね。
人に話を語るのは案外難しいものです。
それこそ「竜頭蛇尾」にならないようにこれからも気を付けていこうと考えさせられた初夏の夜でした。
それでは今夜はこのあたりで。