「貂(てん)」その怪異は人を化かすのが狐や狸より上手いらしい

「貂」それはあまりに可愛い怪異

それは以前山あいの道を通っていたときのことです。目の前を何かが横切りました。猫ではないのは確かです。狸ほど丸くもないです。狐かとも思いましたが狐よりもしなやかな身のこなしでした。
その時横切っていったものはイタチです。
イタチの仲間で有名なものはフェレットやオコジョでしょうか。フェレットも冬場のオコジョなんかは全身が真っ白になってすごく可愛いですよね。
ちなみにイタチの仲間にはイイズナという種類もいます。このイイズナもまたオコジョと一緒で冬になると全身が白くなって可愛いんですよ。
さて、イイズナですが漢字で書くと飯綱と書きます。
どこかで見た漢字ですね。

そう飯綱(イヅナ)とは以前紹介したこともある管狐の別名です。飯綱使いと呼ばれる人達はこのイイズナを駆使する術を使うそうです。

そんなイタチの仲間には「貂」と呼ばれる種類がいます。あまり見慣れない漢字ですが「テン」と読みます。仲間と言っていいのかは分かりません。
貂は妖怪というよりはイタチの怪異と言ったほうがいいでしょうか。
今回はそんな可愛い怪異「テン」についてお話ししましょう。

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貂(テン)とは魔力を持ったイタチのこと

テンはイタチの仲間でちょっと胴長な可愛い動物です。
日本にもツシマテンやホンドテンなどが居ますが現在では数も大分減ってしまいツシマテンに関しては天然記念物に指定されているほどです。
毛皮のために乱獲されてしまったりさほど強い動物でもないので他の動物に捕食されてしまったりしたのが原因です。

今回紹介する貂(テン)はテンでありながらテンとは少し違います。
貂はイタチが何百年も生きて魔力を得たものだとされています。家猫が長い年月を生きて猫又になるのと似ていますね。
広島県ではテンを殺めると火災にあうという伝承が残っています。鳥山石燕が刊行した「画図百鬼夜行」にも「鼬」という題目で貂が描かれています。貂が何匹か絡み合い火柱を起こしている絵です。鳥山石燕によれば絡み合う貂を家のそばで見掛けると家が火事になるとされています。
きっとこのあたりがテンを殺めると火災にあうという伝承の元になっているのでしょう。

石川県でもテンが目の前を横切ると不幸が訪れると言われています。黒猫が横切ると不幸がやってくるという迷信と通ずるものがありますね。

イタチの怪異とは言え貂の見た目はテンやイタチとそっくりです。可愛いながらも火災を起こすとはなかなか厄介な怪異です。
忍者の里である三重県の伊賀にはこんな言葉が残っています。
「狐七化け。狸八化け。貂九化け」というものです。
以前狸は狐よりも人を化かすのが上手いという話をしたことがありますがその狸よりもさらに上の存在が現れました。
貂は狐や狸よりも人を化かすのが上手いというのです。

実際のところはどれほどのものなのかは分かりませんが忍者もまた人を欺く術に長けていたことでしょう。
もしかすると貂に術を教えたのは忍者で飯綱使いのように忍者も貂を使役していたのかもしれませんね。
または忍者の使う術は貂から教えてもらったものなのかもしれません。これも勝手な想像なんですけどね。

人を化かす貂はどこに潜むか分かりません。もしかするとあなたのそばに潜んでいるかもしれません。
夏とは言え火の元にはご用心を。

それでは今夜はこのあたりで。

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