九尾の狐の執念の欠片から生まれたもの
平安時代の伝説では九尾の狐は殺生石となりました。その殺生石は玄翁和尚によって砕かれましたがその欠片は全国各地に散らばります。
そして九尾の狐の執念は新たな憑き物を生み出しました。そこまでは下の記事でお話ししました。
殺生石の欠片から生まれたといわれるものは主に関東の尾先(オサキ)に岐阜県の牛蒡種(ゴボウダネ)と四国に伝わる犬神です。
今回はその中でも尾先と牛蒡種の二つとそれに加えて管狐(クダギツネ)についてお話ししたいと思います。なぜ管狐なのかはまた後で説明させて頂くつもりです。
それでは群馬県に飛んだ殺生石の欠片から生まれたと言われる尾先の話からしていきましょう。
尾先と尾裂と金色の毛
尾先は群馬県に飛んだ殺生石から生まれたと言われています。ですが白面金毛九尾の狐と言われる由縁である金色の毛。特に尻尾の金毛から生まれたという説もあります。
尻尾の毛から生まれたため尾先と表記されますが尻尾が九尾の狐のように尾が裂けているために尾裂と表記されることもあります。
生息しているのは関東地区で見た目はイタチっぽいと言われています。人にはあまり憑くことはなく主に家に憑くそうです。尾先の憑いた家はオサキモチとも呼ばれます。
尾先は金銀や価値のあるものを家に運んできます。そのため尾先が憑いた家は裕福になると言われていますが尾先は憑いた家の人間の言うことは聞かずに勝手に行動します。
先程人にはあまり憑くことはないと言いましたが時折人に憑くこともあります。憑かれた人は常に興奮していたり病気になったり精神に異常をきたしたりするそうです。
牛蒡種(ゴボウダネ)と殺生石と邪眼
殺生石の欠片は岐阜県の飛騨地方にも飛び散りました。飛騨に飛んだ殺生石から生まれたものは牛蒡種(ゴボウダネ)と呼ばれています。
この牛蒡種の伝承は欠片が飛んだ岐阜県を中心に長野県や福井県にも伝わっています。
飛騨に伝わる伝承では牛蒡種は75匹の動物霊だと言われていますがそれ以外の地域での牛蒡種は動物霊ではなく人の生き霊だと伝わっています。
牛蒡種は妬みや羨ましさの感情から生まれるとされています。この牛蒡種も個人ではなく家系に憑くとされていて牛蒡種の筋に憎まれ睨まれると頭痛を起こしたり精神をやられるとされています。この部分に関して言えば以前お話ししたイビルアイ・邪眼と酷似しています。
そしてこの牛蒡種の筋が他の家のもの(土地や持ち物)を誉めるとその誉められたものはやがて衰えてしまうと言われています。
これは妬みや羨ましさから生まれた牛蒡種の持つ負の部分が作用しているのでしょう。
管狐(クダギツネ)と尾先 ちなみに別名は飯綱(イヅナ)
長野県を中心に伝わる伝承では竹筒に入るほど小さな狐がいるそうです。名前を管狐といい中部地方に生息しているそうです。飯綱(イヅナ)とも呼ばれています。
関東方面に居ないのは関東は尾先の縄張りだからとも言われています。この管狐も憑きものの一種で尾先と同じように主に家に憑きますが管狐の特徴としては尾先と違うのは家の住人の言うことを聞くという点です。
管狐を使うことで神通力を使えるようになると言われていて様々な益を呼び込むことが出来るそうです。また人に憑けて病気にしたりも出来るんだとか。
この管狐を使う家系を飯綱使いや管使いと呼びますが管狐が憑いた家は裕福になると言われています。
ですが言い伝えでは管狐は75匹まで増えると言われていてやがて食い潰され家系は衰えてしまうと言われています。
管狐と牛蒡種の共通点 あとオコジョの話
今回は管狐を紹介のには理由があります。実は管狐と牛蒡種にはいくつか共通点があります。
牛蒡種と管狐に共通するのはまずその地域です。管狐は長野県を中心とした中部地方で伝わる伝承です。対する牛蒡種は岐阜県を始めとする長野県に福井県です。
次の共通点は牛蒡種の75匹の動物霊と管狐が75匹に増えると言われていることです。
もしかすると伝承にはありませんが管狐も牛蒡種や尾先と同じように九尾の狐の殺生石から生まれたものなのかもしれません。
最後に少し可愛い話をしましょう。
オコジョという動物を知っていますか?夏は茶色い色をしていますが冬になると体毛が真っ白になる可愛い動物です。
ある地方ではこのオコジョのことを山オサキと呼びます。そしてオコジョはクダギツネとも呼ばれます。
もしかすると伝承に出てくる尾先と管狐は実は同じものなのかもしれませんね。
殺生石は溶岩だと言われます。砕け散った殺生石の欠片はもしかするとそのあたりに転がっているかもしれません。あなたが手にしてくれるその時を待ちわびながら。
それでは今夜はこのあたりで。