「ヴァルキリー」と「ラグナロク」戦場の乙女と世界の終わり

戦場を駆ける乙女「ヴァルキリー」

白鳥のような大きく白い翼を羽ばたかせながら光を纏い彼女は戦場に降り立ちます。
彼女の名は「ヴァルキリー」。

地域によっては「ワルキューレ」「ヴァルキュリア」とも呼ばれています。
彼女は戦場を駆けあるものを探します。
ヴァルキリーが探すものとはなんなのでしょうか。
そしてなぜ彼女はそれを探しているのでしょうか。

今回は北欧に伝わる戦乙女ヴァルキリーについてお話ししましょう。

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ヴァルキリーが探し求めるのは戦死した勇士

ヴァルキリーもといワルキューレは戦場を駆け巡り戦死した者を集います。
ただ誰でも良いというわけではありません。
彼女は戦死者の中より位の高いものや武勲をあげた勇士たちを集めるのです。

古代ノルド語ではヴァルキリーのことをヴァルキュリアと表記しますがこれはvalrという「戦場の死体」を意味する言葉とkjόsaという「選ぶ」の意味を持つ言葉を合わせたものです。
つまりヴァルキュリアは「戦死者を選定する」という意味の名前になるのです。

さて、ヴァルキリーが戦死者を選定するのは主神オーディーンの命によるものですがなぜ彼女は勇士を集めているのでしょうか。

世界の終わり「ラグナロク」に備えて

北欧神話には神々の運命と呼ばれるものが描かれています。

「世界の終わり」「終末の時」とも言われていてラグナロクが起こる前にはフィンブルヴェトと呼ばれる冬が訪れます。
フィンブルヴェトは狼の冬、風の冬と言われていてこの冬が始まると夏が訪れなくなります。
そしてこのフィンブルヴェトが3度訪れた後は人々の節度は失われて生物は息絶えるというものです。

このラグナロクの中に主神オーディーンがエインヘリャルと呼ばれる戦士たちを率いて戦いに赴く話が描かれています。
この時オーディーンが率いるエインヘリャルが「死した戦士たち」つまりヴァルキリーが集めた戦死者たちなのです。

そう、ヴァルキリーはこのラグナロクに備えて戦いに秀でた勇士をあつめているのです。
彼女に集められた戦死者エインヘリャルは天空の宮殿ヴァルハラに招かれます。
そこでエインヘリャルをもてなすのもまたヴァルキリーの役目なのです。

ちなみに古代ノルド語のヴァルキュリアは一人のヴァルキリーを指す名称です。
複数の場合はヴァルキュリユルと呼ばれます。ヴァルキリーは一人ではないのです。
主に語られている伝承ではヴァルキリーは9人いるとされています。
ヒルドやブリュンヒンデ、ノルニル三女神のスクルドもまたヴァルキリーのリストに名を連ねています。
世界の終わりラグナロクがやってくればヴァルキリーの集めたエインヘリャル達の出番となるのでしょうが世界の終わりは見たくないものです。

白鳥の翼を羽ばたかせ煌めく鎧に身を包んだ美しいヴァルキリーの姿は一度目にしてみたいものですが。

それでは今夜はこのあたりで。

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