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「火消婆」火の力と火を消し去るもの
火は古来より人類が生活に利用してきたものです。暖を取るために食材を調理するため。そして暗闇を照らす明かりとして。
現在でもそうですが山間での狩猟の際には夜間火を絶やさずにしておくことで獣が近寄るのを防いでいました。
ゾロアスター教では火は神聖なものとされ火そのものを崇めています。
オリンピックで焚かれる聖火やそろそろ始まる花火大会のシーズンで使われる花火ももちろん火を利用したものです。
以前火を好む子供の話をしたこともありますが火とは人間と密接な関係にあり崇められながらも恐ろしい存在なのです。
火が持つエネルギーは実は大変強いものです。熱エネルギーとしても強いものですが風水や五行説などでも火は光の象徴とされてもいます。もちろん熱を表すものでもあるんですけどね。
ちなみに偶然ではありますが火は五行説のなかでは「夏」を表すものでもあるんですよ。
さて、前置きがかなり長くなってしまいましたが今回はそんな火を消し去ってしまう妖怪についてお話ししましょう。
その妖怪の名前は「火消婆(ひけしばあ)」と言います。そんな名前なの?と思った方もいらっしゃるでしょう。
ですが名前とは案外単純なものなのですよ。しかし単純な名前だからといって見くびってはいけません。
「今昔画図続百鬼」の晦の部に記載されている火消婆ですがこの妖怪の行うことは火を消してまわることです。それもまた名前のままですね。ではなぜ火消婆は火を消すのか?その理由こそに本当の恐ろしさが秘められているのです。
火と暗闇と魑魅魍魎
人間と密接な関係にある火ですがその用途は様々です。調理や暖を取るなどの熱を利用したものや松明や行灯などの光を利用したものです。
火消婆が火を消してまわる理由はここ光にあります。
この世は陰と陽で作られています。陽とは光です。つまり陰の存在となる妖怪や魑魅魍魎に幽霊は基本的に光が苦手なのです。
しかしこれは基本的にです。以前お話ししましたが念の強い霊は昼間に目撃されることもあります。
そんな妖怪や魑魅魍魎の通り道を作るために火消婆は明かりとして使われている行灯などの火を消しているのです。
これは名前からは想像出来ないくらいに重要なことです。なぜなら火消婆が火を消したということはそのあとから続いてもっと恐ろしいものがやって来るということなんですから。
しかしここで少し気になるのは不知火や狐火に鬼火などの怪火についてです。火が苦手である妖怪などが火を扱うのはなぜなのかということです。
それはきっと人間が使うのは現世の火で怪火は常世の火だからなのでしょう。
現代では火を明かりとして使うことはあまりないでしょう。しかしよく思い出してみてください。映画やドラマなどで幽霊が現れる際に部屋の蛍光灯がチカチカと点滅するような光景を見たことがありませんか?
きっと火消婆は火を吹き消す事には慣れていますが電気を使って灯されている蛍光灯を消すのは苦手なのでしょう。もしかするとブレーカーやスイッチの付近で悪戦苦闘している姿を目撃できるかもしれませんよ。
何はともあれ部屋の明かりが突然消えたりするような事があったら用心してください。すぐに明かりを点けないととんでもないものがやって来るかもしれませんよ。
それでは今夜はこのあたりで。