魔除けの鈴と神様を呼ぶ鈴の音
レクイエムと鎮魂歌の話に入る前にまず鈴の話をしていきましょう。
春から秋にかけて全国で熊の被害が多くなってきます。無防備に無装備で山に入ると突然熊と遭遇し襲われる危険性があります。
ですが熊は意外に臆病な動物です。人間がいるのが分かっていて寄ってくる熊はあまり居ないそうです。突然目の前に現れた人間にビックリして襲ってくるパターンがほとんどだと聞きます。
そんな時に役立つのが通称「熊鈴」です。歩くことで鈴の音を鳴らし自分がいることをアピールするためのものです。もし今のシーズン山菜などを採りにいく際は必ず所持するようにしましょう。
さて、かなり話はそれましたが鈴に話を戻しましょう。この鈴ですが昔から魔除けの力を持っているとも言われています。
鈴の音は神様を呼び悪いものを追い払ってくれるそうなのですが鈴と鎮魂歌になんの関係があるのだとお思いでしょう。実は少しだけ関係があります。
鎮魂歌が歌われる鎮魂祭には鈴が使われるのです。ただそれだけなのですがそろそろ記事タイトルにある鎮魂の話に進みましょう。
鎮魂祭の鎮魂の意味を知る
宮中で行われる祭事の一つに鎮魂祭というものがあります。
そもそも「鎮魂」とはどういものなのでしょう。神道では生きている人の魂は結構不安定なものでふとしたきっかけで体から離れてしまうと言われています。
そこで体を鎮(しず)め魂をつなぎとめることを「鎮魂」と言いますが「たましずめ」と読みます。
そして「鎮魂(たましずめ」の儀式は「宇気槽の儀(うきふねのぎ)」と「魂振の儀(たまふりのぎ)」で構成されています。魂振(たまふり)とは魂を外から揺らして活力を高めるためのものです。
この鎮魂祭は毎年11月22日に行われます。ちょうど冬至の時期にあたりますが冬至は一年で一番日の出ている時間が短い日です。
太陽を司る天照大神(あまてらすおおみかみ)の力が一番弱くなる日と言われています。天照大神の子孫にあたる天皇の魂の活力を高めるためにこの鎮魂祭は冬至の時期に行われるのです。
そしてこの鎮魂祭で使われるのが鎮魂の歌です。
レクイエムと鎮魂歌の違い
レクイエムとはカトリック教で行われる死者の安息を願うミサのことをいいレクイエムという言葉自体も「安息」の意味を持っています。
このミサの事をレクイエムと呼びますがこのミサで使われる歌も同様にレクイエムと呼ばれています。
先程お話ししましたが「鎮魂」とは生者の魂をつなぎとめ活力を高めることを指します。
そしてレクイエムは死者の安息を願うためのものです。
レクイエムと鎮魂歌は同じものだと思われていますが実際にはレクイエムには日本語としての鎮魂の意味はありません。
死者の安息のことを魂を鎮(しず)めると表現したことで鎮魂の本来持っている意味とは違った形で広まったのかもしれませんね。
それでは今夜はこのあたりで。